歯列矯正と顎関節症の関係。歯並びを改善すると症状はよくなる?悪化する?

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。 https://www.med.oita-u.ac.jp/ https://www.oita-u.ac.jp/
 

顎関節症(がくかんせつしょう)の治療の一環として歯列矯正を選択する人がいますが、歯列矯正をするとかえって顎関節症が悪化するという声もあるようです。

この記事では、歯列矯正と顎関節症の関係性や、矯正治療でほんとうに顎関節症が改善するのかを解説します

1. 歯列矯正と顎関節症(がくかんせつしょう)の関係は?

歯列矯正と顎関節症には、深い関係があると思われがちですが、実際にはどうなのでしょうか?

結論から言うと、歯列矯正をしたからといって必ずしも顎関節症が治るわけではありません。

逆に、歯列矯正が原因で顎関節症が必ず悪化するわけでもありません。

歯列矯正と顎関節症の関係は複雑で、一概に断定することはできません。

なぜハッキリと言い切れないのか。その理由をいくつかのポイントでまとめました。

(1)顎関節症を引き起こす原因は多岐にわたる

顎関節症は、その名の通り顎関節に何らかの異常が生じることで起こりますが、原因はひとつとは限りません。

例えば、歯並びや噛み合わせの悪さが原因で顎関節に負担がかかり、顎関節症を発症することがあります。

また、スポーツや事故などによる顎関節への直接的な衝撃や、寝ている間の歯ぎしり、食いしばりなど、顎に負担をかける癖も原因となりえます。

精神的なストレスが原因で顎関節症を発症するケースも少なくありません。

ストレスを感じると、無意識のうちに歯を食いしばったり、顎に力が入ったりすることがあります。

このような状態が続くと、顎関節やその周囲の筋肉に負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性があります。

日常生活における姿勢や癖も、顎関節症の原因になり得ます。

長時間のデスクワークやスマホの操作など、猫背の状態が続くことで、顎関節に負担がかかりやすくなるといわれています。

また、頬杖をつく癖や、片側だけで物を噛む癖なども、顎関節への負担を増大させる要因となります。

以下に、顎関節症の原因として考えられるものをまとめました。

身体的要因

精神的要因

生活習慣

・歯並びや噛み合わせの悪さ
・顎関節への直接的な衝撃
・歯ぎしり、食いしばり
・顎関節の病気や怪我

・ストレス

・猫背
・頬杖をつく
・片側だけで食事

ご自身の生活習慣や癖などを振り返りながら、心当たりのあるものがないか確認してみましょう。

(2)矯正治療が顎関節症に与える影響

歯列矯正によって歯並びが整い噛み合わせが改善されると、これまで特定の歯に偏っていた噛む力がバランス良く分散されるようになります。

その結果、顎関節にかかる負担が軽減され、顎関節症の症状の改善が期待できます

例えば、以下のようなケースでは矯正治療によって顎関節症の症状が改善される可能性があります。

ケース

説明

出っ歯(上顎前突)

上の前歯が前に出ているため、奥歯で食べ物を噛み砕くことが難しく、顎関節に負担がかかりやすい状態です。

受け口(反対咬合)

下の歯が上の歯よりも前に出ている噛み合わせで、顎関節症のリスクが高まります。

開咬

奥歯を噛み締めても前歯が閉じない状態。奥歯だけで食べ物を噛むため、顎関節への負担が大きくなってしまいます。

これらの歯並びや噛み合わせの悪さが原因で顎関節症を発症している場合、矯正治療によって根本的な改善を目指せる可能性があります。

ただし、顎関節症の原因は非常に多岐にわたるため、歯列矯正が必ずしも有効であるとは限りません。

顎関節症の症状がある場合は、自己判断せず歯科医師に相談することが大切です

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2. 顎関節症ってどんな症状?

そもそも、顎関節症(がくかんせつしょう)はどのような病気なのでしょうか?

ここでは、症状の特徴や原因についてご紹介します。

(1)口の開閉時に違和感、痛み、クリック音がある

顎関節症は、あごの関節やものを噛むときに使う筋肉に問題が生じることで、さまざまな症状が現れる病気です。

顎関節と筋肉の構造

顎関節症の症状は、顎関節や咀嚼筋に様々な問題が生じることで現れます。

代表的な症状としては、口の開閉時に感じる違和感、痛み、クリック音などです

口を開け閉めする際に、スムーズに動かず引っかかりを感じたり、顎関節周辺に痛みを感じたりすることがあります。

また、開口時に「カクッ」というクリック音や、砂が擦れるような「ジャリジャリ」といった音が鳴ることもあります。

これらの症状は、顎関節症の初期段階によく見られます。

(2)原因はあごの関節や咀嚼筋

顎関節症は、文字通り顎の関節である「顎関節」に何らかの問題が生じることで起こる病気です。

顎関節は、頭蓋骨と下顎骨をつないでいる関節で、物を噛む・口を開け閉めするといった動作をスムーズに行うために重要な役割を担っています。

この顎関節と周囲の咀嚼筋に起こる問題には、以下のようなものがあります。

分類

症状

関節包・靭帯

• 顎関節やその周辺の痛み
• 口の開閉運動の制限
• 顎を動かした時の違和感(クリック音、ポキッという音、カクカクする感じなど)

咀嚼筋

• 顎の筋肉の痛みやこわばり
• 頭痛
• 肩こり

その他

• 耳の痛み
• めまい
• 開口時の顎のずれ

これらの症状は、顎関節や咀嚼筋に負担がかかり続けることによって引き起こされます。

例えば、歯ぎしりや食いしばり、頬杖をつく癖、猫背などの姿勢が悪影響を与えることがあります。

また、ストレスや不安などによって顎の筋肉が緊張し、症状が悪化することもあります。

(3)放置すると日常生活に支障が出ることも

顎関節症は、初期症状では自覚症状が乏しい場合もありますが、放置すると症状が悪化し、日常生活に様々な支障をきたす可能性があります。

例えば、顎関節症が進行すると、口が開きにくくなるため食事に苦労するケースが多く見られます。

固いものが食べられなくなったり、食事に時間がかかったりすることで、食事が楽しめなくなるだけでなく、栄養摂取にも影響が出る可能性があります。

また、口の開閉がスムーズにいかず、発音がしづらくなることで、会話にも支障が出るケースがあります。

さらに、顎の痛みや不快感から、精神的なストレスを感じやすくなることも考えられます。

日常生活における顎関節症の影響を具体的に示すと、以下の通りです。

項目

具体的な支障

食事

・口が開きにくく、食事に時間がかかる
・固いものが食べられない
・食事中に顎が痛む

会話

・口が大きく開けられず、発音が不明瞭になる
・顎の痛みで会話に集中できない

睡眠

・顎の痛みで眠りが浅くなる
・歯ぎしりや食いしばりが悪化する

その他

・顔面の歪み
・頭痛や肩こり
・めまい

このように、顎関節症は放置すると様々な場面で日常生活に支障をきたす可能性があります。

少しでも顎に違和感を感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。

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3. 歯列矯正によって顎関節症はどう変化する?

冒頭にお伝えしたとおり、歯列矯正が顎関節症に与える影響は、一概に良いとも悪いとも言えません。

なぜなら、歯列矯正によって顎関節症の症状が改善する可能性もあれば、逆に悪化する可能性もあるからです

ここでは、歯列矯正が顎関節症に与えるプラスの影響とマイナスの影響を紹介します。

(1)プラスの影響|噛み合わせ改善による顎関節の負担軽減

歯列矯正によって顎関節症が改善する可能性は、噛み合わせと顎関節への負担の軽減が関係しています。

歯列矯正を行うことで、以下のような改善が期待できます。

改善点

説明

噛み合わせの改善

歯並びが整うことで、上下の歯が均等に接触するようになり、特定の歯や顎関節に負担が集中することを防ぎます。

顎関節への負担軽減

噛み合わせが改善されると、顎関節にかかる負担が分散され、関節や周りの筋肉への負担を軽減します。

顎の動きのスムーズ化

歯並びが整うことで、顎の動きがスムーズになり、口の開閉や咀嚼が楽になります。

これらの改善によって、顎関節症の症状である、顎の痛み、 クリック音、開口障害などの改善が期待できます。

(2)マイナスの影響:歯の移動による顎関節の負担増加

歯列矯正は、歯に力をかけてゆっくりと動かしていく治療です。

そのため、治療中は顎関節に負担がかかり、一時的に顎関節症の症状が現れたり、悪化したりする可能性があります

例えば、矯正治療のために抜歯をした場合、抜いた歯の分の負担が他の歯にかかり、顎関節にも大きな影響を及ぼすことがあります。

抜歯をしなくても、矯正治療中は常に噛み合わせが変化していくため、顎関節に負荷がかかり顎に違和感を感じることもあるでしょう。

ただし、矯正治療中に顎関節症の症状が現れた場合、多くの場合は一時的なものと考えられます。

顎関節に違和感を覚えた場合は、症状を和らげる方法として次のようなマッサージを試してみてください。

  • 拳や指で顎の付け根から鎖骨付近にかけて、首筋をほぐす

  • 中指・薬指などをこめかみにあてて、小さな円を描くようにこめかみをほぐす

(3)大事なのは、症状を見極めた適切な治療計画

歯列矯正が顎関節症に与える影響は、人によって、そして症状によって大きく異なります。

そのため、治療を開始する前に、現在の顎関節の状態や症状の有無、そして歯並びや噛み合わせの状態を医師がしっかりと見極めることが何よりも重要です。

例えば、顎関節症の症状が出ている場合、その原因が歯列矯正によるものなのか、それとも別の要因によるものなのかを判断する必要があります。

もし、顎関節症と思われる症状が出ている場合は、歯科医師にそのことを伝えて治療の方向性を相談しましょう。

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4. 顎関節症をお持ちで歯列矯正の治療を受けたい方へ

顎関節症を抱えている、あるいは過去に顎関節症だったという方は、歯列矯正を受けるときに以下のポイントを意識してください

(1)顎関節症の症状がある場合は必ず相談する

歯列矯正治療は、歯に矯正装置を取り付け、歯を少しずつ動かしていくことで歯並びを改善していきます。

この歯の移動が、顎関節に負担をかけ、顎関節症の症状を悪化させてしまう可能性は否定できません

顎関節症の症状を抱えている場合は、治療開始前に必ずその旨を医師に伝えるようにしましょう。

(2)セカンドオピニオンも有効な手段として活用する

歯列矯正は、お口の健康と見た目を大きく左右する重要な決断です。

特に顎関節症を抱えている場合は、治療が症状に与える影響を慎重に見極める必要があります。

信頼できる医師との二人三脚が不可欠ですが、時には別の医師の意見を聞くことも有効です。それがセカンドオピニオンです

セカンドオピニオンとは、現在診療を受けている医師とは別に、他の医療機関の医師に意見を求めることです。

治療法の妥当性を確認したり、別の選択肢を検討したりする際に役立ちます。

セカンドオピニオンを受けるメリットとしては、以下の点などが挙げられます。

メリット

説明

納得感向上

複数の医師の意見を聞くことで、治療に対する理解や納得感を深めることができます。

不安の解消

治療法や経過に不安がある場合、別の医師の意見を聞くことで不安を解消できることがあります。

新たな視点の獲得

専門分野の異なる医師から意見を聞くことで、新たな治療法や視点を得られることがあります。

最適な治療選択

複数の選択肢を比較検討することで、自身にとって最適な治療法を選択することができます。

より納得感のある治療を選択できるよう、また信頼できる歯科医院・歯科医師を探すうえでも、セカンドオピニオンを有効活用してみてください。

5. 信頼できる歯科矯正治療を受けたい方はhanaravi(ハナラビ)

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顎関節症は多くの人が抱えやすいトラブルのひとつで、放置すると日常生活における会話や食事にも支障をきたしてしまいます。

歯並びの乱れが顎関節症の原因となるケースもあるため、ぜひ一度歯科医院に相談してみてください。

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