子供のマウスピース矯正とは?効果や治療の特徴、費用などを解説

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。 https://www.med.oita-u.ac.jp/ https://www.oita-u.ac.jp/
 

取り外し可能で目立ちにくいマウスピース矯正は、大人だけでなく子供の歯科矯正でも人気の治療方法です。

この記事では、子供のマウスピース矯正にはどのような効果があるのか、治療の特徴や費用などを解説します

1. 子供の矯正治療(小児歯科矯正)の特徴

子供の矯正治療は、顎の骨の成長を利用して歯並びを整えられる点が大きな特徴です。

そのため、大人の矯正治療のように歯を動かすことだけに焦点を当てるのではなく、顎の骨の成長をコントロールしながら治療を進めていきます。

(1)1期治療と2期治療に分けられる

子供の矯正治療は、大きく分けて1期治療と2期治療の2つに分けられます。

治療時期

治療内容

対象

期間

1期治療

顎の骨の幅を広げたり、上下の顎のバランスを整えたりする

乳歯と永久歯が混在している時期

2~4年程度

2期治療

永久歯を正しい位置に動かして、歯並びと噛み合わせを整える

永久歯が生え揃ってから

1〜3年程度

1期治療は、顎の成長を利用して歯が生えるスペースを確保するための治療です

この時期に顎の骨格を整えることで、永久歯が正しく生えるための土台を作ります。

2期治療は、永久歯が生え揃ってから行う治療です。

ワイヤー矯正やマウスピース矯正などを用いて、歯を目的の位置に動かしていきます。

どちらの治療も、子供の歯並びや噛み合わせを改善するために重要な役割を担っています。

(2)大人の歯科矯正との違い

子供の矯正治療と大人の矯正治療では、その目的が大きく異なります。

大人の場合はすでに顎の成長が止まっているため、現状の歯並びを整え、美しい口元を実現することを目標とします。

一方、子供の矯正治療は、顎の成長段階にある点を活かし、将来的な歯並びの改善を目指します。

具体的には、顎の骨の成長をコントロールして、歯が生えるための十分なスペースを確保したり、歯並びが悪くなる原因となる癖を改善したりします。

大人の矯正治療は「現状の歯並びの改善」が目的であるのに対し、子供の矯正治療は「将来を見据えた歯並びの土台作り」を目的だと言えるでしょう

この目的の違いが、使用するマウスピースにも違いを生んでいます。

大人のマウスピース矯正では、薄くて透明度の高いマウスピースを使用します。

一方、子供の矯正治療ではやや厚いマウスピースを使用します

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2. 子供のマウスピース矯正の特徴

子供のマウスピース矯正には、次のような特徴があります。

(1)マウスピースの装着時間が大人より短い

子供の矯正治療、特にマウスピース矯正の場合、大人の矯正治療と比較して、マウスピースの装着時間が短くて済むという特徴があります。

大人のマウスピース矯正では、1日20~22時間程度の装着が推奨されています。

これは、食事と歯磨きの時間を除いて、ほぼ一日中装着している必要があるということです。

一方、子供の矯正治療では顎の骨の柔軟性が高いことなどを考慮して、大人のように長時間装着する必要はありません。

一般的には、1日12時間程度の装着時間でも十分な効果が期待できるとされています

対象

装着時間の目安

大人

1日20時間以上

子供

1日12時間程度

(2)乳歯と永久歯が混在している時期から治療可能

従来のマウスピース矯正では、永久歯が生え揃っていないとマウスピースを装着することができませんでした。

そのため、1期治療では歯列を広げるための装置を使用し、永久歯が生え揃うのを待ってからマウスピース矯正を行うというケースが多く見られました。

しかし、子供の矯正治療に対応したマウスピース矯正が登場したことにより、1期治療からマウスピース矯正を行うことが可能になりました。

(3)取り外し可能で虫歯のリスクを抑えられる

子供の矯正治療では、特に乳歯と永久歯が混在している時期は、歯磨きが難しく、虫歯のリスクが高まります。

従来のワイヤー矯正も、ブラケットやワイヤーなどの装置を歯に固定するため、食べ物が挟まりやすく、歯磨きが複雑になりがちでした。

このため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まるという懸念がありました。

一方、マウスピース矯正は、食事や歯磨きの度に装置を取り外せるため、これらの問題を回避できます。

子供たちは普段と同じように歯磨きができ、口腔内を清潔に保つことができるのです。

この結果、虫歯のリスクを低減できるだけでなく、歯周病の予防にもつながります。

保護者にとっても、子供の歯磨き指導がしやすくなるというメリットがあります

(4)口周りの筋肉を鍛えるトレーニング(MFT)も行う

子供の矯正治療では、歯並びを改善するためにマウスピース矯正と併用して「MFT(口腔筋機能療法)」を行う場合があります。

MFTとは、舌や唇、顔の筋肉をトレーニングすることで、口周りの筋肉の機能を向上させる治療法です。

口周りの筋肉は、食べ物を噛んだり飲み込んだりする動作だけでなく、発音や呼吸、顔の骨格形成にも深く関わっています。

しかし、口呼吸や舌の癖、指しゃぶりなどの悪習慣があると、口周りの筋肉が正常に機能しません。

結果、歯並びが悪くなったり顔の成長に影響が出たりすることがあります。

MFTではこれらの悪習慣を改善し、口周りの筋肉を鍛えることで、歯並びを改善に導きます。

具体的なトレーニング方法としては、下記のようなものがあります。

トレーニング内容

具体的な方法

口腔筋肉のトレーニング

舌の運動を通じて、舌の位置や動きを正しい状態にする

唇のトレーニング

唇や口角を動かして、唇周辺の筋肉を鍛える

咀嚼や飲み込みのトレーニング

咀嚼・飲み込みのときに舌や顎の筋肉を正しく行えるようにする

MFTの代表的なトレーニングとして、「あいうべ体操」があります

「あ」「い」「う」「べ」と口や舌を大きく動かして発生することで、口・舌をしっかりと動かしていくのです。

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3. 子供のマウスピース矯正の効果

子供の顎の骨は成長段階にあり、柔軟性が高いという特徴があります。

そのため、この時期にマウスピース矯正を行うことで、歯や顎の骨に適切な力を加え、健やかな成長を促すことが期待できます

具体的には、以下のような効果が期待できます。

(1)噛み合わせが改善され顎の成長が促される

マウスピース矯正を行うことで、歯並びが整うだけでなく、顎の成長を促す効果も期待できます

マウスピース矯正では、歯を正しい位置に動かすことによって、顎の骨に適切な刺激を与え、正常な発育を促すことができるからです。

マウスピース矯正と並行して、口周りの筋肉を鍛えるトレーニング(MFT)を行うことで、より効果的に顎の発達を促せます。

顎の成長が著しい子供の時期にマウスピース矯正を行うことで、より効果的に歯並びと噛み合わせを改善することができます。

(2)歯並びが整い舌の動きがスムーズになり正しい発音がしやすくなる

歯並びが整うことで、舌がスムーズに動くようになり、正しい発音がしやすくなるという効果も期待できます。

舌は、口の中の空間の形に合わせて動きます。

歯並びがでこぼこしていると、舌がスムーズに動かしにくくなってしまい、特定の発音が不明瞭になることがあります。

子供の頃にこうした状態が続くと、発音の仕方が癖付いてしまい、大人になってからも正しい発音を習得するのが難しくなる可能性も

そのため、将来を見据えて、歯並びは早めに矯正をすることが大切です。

(3)舌が正しい位置で収まりやすくなり鼻呼吸がしやすくなる

子供の頃からの口呼吸は、様々な悪影響を及ぼす可能性があります。

具体的には、集中力の低下やアレルギー症状の悪化、歯並びの乱れ、口臭などが挙げられます。

口呼吸の原因の一つに、舌の位置があります

舌が正しい位置にないと、気道が狭くなり、鼻呼吸がしづらくなってしまうのです。

マウスピース矯正を行うことで、舌の正しい位置を覚え、舌の筋肉を鍛えることができます。

子供のうちからマウスピース矯正や舌のトレーニングを行うことで、口呼吸の改善につながる可能性があるのです。

(4)指しゃぶりがなくなり後天的な歯並びの悪化を防げる

歯並びが悪くなる原因は、遺伝などの先天的な要因だけでなく、後天的な要因も大きく関係しています。

幼児期の指しゃぶりは、歯並びが悪化する代表的な後天的要因のひとつです。

歯や顎の骨格が未発達な時期に長く続くほど、指しゃぶりなどの癖が歯並びに与える影響は大きいです。

マウスピースを口にいれることで、自然と指しゃぶりの癖が軽減されます。

結果、歯並びが悪化するのを防ぐことができます。

4. マウスピース矯正の種類と特徴

子供の歯列矯正に用いられるマウスピースには、様々な種類があります。

ここでは、代表的なマウスピース矯正の種類と特徴について解説していきます。

(1)マイオブレース

マイオブレースとは、オーストラリアの歯科医師が開発したマウスピース型の矯正装置です。

世界100カ国以上で取り入れられており、日本でも広く普及しています。

マイオブレースは、就寝時と日中の1時間程度の装着を継続することで効果が期待できます。

マウスピースの装着に加えて、舌や口周りの筋肉を鍛えるトレーニングを並行して実施されます。

マイオブレースの適応年齢は5〜15歳です。

一般的に、顎の成長は小学校高学年ころに完了するといわれています。

そのため、マイオブレース小学1年生〜5年生の年齢で、もっとも高い効果を発揮するとされています。

(2)インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、従来のインビザラインを子供の矯正治療(1期治療)向けに改良したマウスピース矯正です。

従来のワイヤー矯正と比べて目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外せるため、虫歯のリスクを抑えられます。

子供の歯は柔らかく、顎の骨も成長段階であるため、大人の矯正治療に比べて短い期間で治療効果を得られるケースが多いでしょう。

通常の子供向けマウスピース矯正と異なり、1日20時間の装着が必要です

(3)プレオルソ

プレオルソは、シリコン製のやわらかいマウスピースを用いた矯正装置です。

就寝時と日中は約1時間程度マウスピースを着用し、並行して口腔周囲筋のトレーニングを行います。

プレオルソは、歯や顎の骨の成長を利用して歯並びを整えるため、主に10歳までの子供の矯正治療に用いられます。

(4)T4K

T4Kは、主に6歳〜10歳くらいまでを対象としたマウスピース型矯正装置です。

就寝時にのみ使用し、歯と顎の成長を促すことで、歯並びを整えていきます。

T4Kは、受け口(下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせ)や出っ歯、歯列狭窄(歯が生えるスペースが足りない状態)の治療に効果があります。

(5)バイオネーター

バイオネーターは8〜12歳頃の、顎の成長段階にある子供が治療対象となります。

治療では、シリコンとワイヤーを組み合わせたマウスピース矯正装置を使用。

就寝時を中心に1日10時間程度の装着を目安とし、歯列や顎骨にやさしい力で矯正を行います。

矯正装置の調整のため1〜2ヵ月おきに通院する必要があります。

(6)ムーシールド

ムーシールドは受け口(反対咬合)に有効な治療器具で、乳歯が生え揃う段階である3歳から使用することができます。

歯並びの改善よりも、噛み合わせの改善、舌の位置の調整などを目的とした治療です。

5. 費用と期間の目安

子供の矯正治療にかかる費用や期間は、使用するマウスピースの種類や治療する歯の本数、治療期間、通院する歯科医院によって異なります。

子供の矯正治療で使用するマウスピースには様々な種類があり、それぞれ特徴や費用が異なります。

ここでは、代表的なマウスピース矯正の種類と費用相場をまとめました。

(1)費用

子供の矯正治療にかかる費用は、使用する矯正装置や治療期間、治療内容によって大きく異なります。

先ほど紹介した1期治療のマウスピース矯正の場合、以下のような費用となります。

  • インビザライン・ファースト:約45万〜80万円

  • プレオルソ:約3万〜20万円

  • T4K:約10万円

  • バイオネーター:約3万円

  • ムーシールド:約5万〜10万円

  • マイオブレース:約40万円

この金額に加え、病院での診察や矯正装置の調整、MFTの実施などで別途料金がかかるケースもあります。

これに対して、2期治療の場合は大人の歯科矯正の費用とほぼ変わりません。

マウスピース矯正の場合、部分矯正は10万〜40万円、全体矯正の場合は60万〜100万円が費用相場となっています。

大人の歯科矯正の値段は?方法別の費用相場や料金、支払方法や控除の仕組みまで解説!

(2)期間

子供の矯正治療におけるマウスピース矯正の期間は、使用する装置や歯並びの状態、顎の発育状況によって個人差があります。

一概にどのくらいの期間が必要とは言えませんが、「1期治療は2〜4年」「2期治療は1〜3年」がおおまかな治療期間の目安だとされています

治療期間については、歯科医師とよく相談し、納得した上で治療を開始することが大切です。

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6. 子供のマウスピース矯正のポイント

子供のマウスピース矯正の効果を実感するうえで、守るべきポイントがいくつかあります。

(1)装着時間を守らないと効果が薄れてしまう

マウスピース矯正では、1日に一定以上の装着時間が必要です。

装着時間の目安は、1期治療は10時間程度、2期治療は20時間以上が一般的です。

装着時間を守らない場合、治療計画に狂いが生じ、治療期間が延びてしまう可能性があります。

マウスピース矯正装置は取り外しが可能であり、食事や歯みがきのストレスがないというメリットがあります。

一方、マウスピースを外しっぱなしにしてしまう人も多く、矯正効果をしっかり実感するにはある程度の自己管理が必要です

特に子供の歯科矯正の価値は理解しづらく、大人に隠れて矯正治療をサボってしまうことも。

マウスピースを捨ててしまい、矯正治療が思うように進まないこともあります。

子供のマウスピース矯正では、保護者のサポートが非常に大切です。

(2)トレーニングもしっかり行う

マウスピースの効果を最大限に引き出すためには、 MFT(口腔筋機能療法) の実施も非常に重要です。

MFTでは舌の正しい位置や動かし方を覚えたり、口周りの筋肉を鍛えたりすることで、 歯並びを改善する効果 が期待できます。

トレーニングは 1日に数分で、自宅で簡単に行うことができます。

歯科医師の指示に従い、毎日忘れずに行うようにしましょう。

(3)マウスピースのお手入れを忘れずに

マウスピース矯正では、食事や歯磨きの時以外はマウスピースを装着します。

そのため、マウスピースには唾液や食べかす、歯垢などの汚れが付着しやすく、そのまま放置すると雑菌が繁殖しやすくなります

マウスピースを清潔に保つために、定期的なお手入れを必ず行いましょう。

マウスピースのお手入れは、使用後に水で優しく洗い流し、食器用の中性洗剤を使って歯ブラシやスポンジで洗います。

このとき、歯ブラシは毛先の柔らかいものを使用してください。

マウスピース用の洗浄剤や超音波洗浄機を使うといった方法もあります。

こちらの記事も参考に、マウスピースを清潔な状態に保ちましょう。

マウスピースの洗浄方法を歯科医師が解説!注意点やおすすめの洗浄剤も

(4)紛失や破損・変形に注意する

マウスピースは取り外しが可能なため、紛失したり、破損したりする可能性も高くなります

例えば、食事の際にマウスピースを外して、うっかり捨ててしまったり、置き忘れたりすることがあります。

また、マウスピースをテーブルの上などに置いたままにしておくと、誤って踏んでしまったり、落としたりする可能性もゼロではありません。

このような紛失や破損、変形を防ぐためには、マウスピースケースなどを使用して正しく保管することが重要です

万が一、マウスピースを紛失したり、破損、変形させてしまったりした場合は、すぐに歯科医院に連絡しましょう。

新しいマウスピースを作成してもらう必要がある場合や、破損状況に応じて修理対応をしてもらう必要がある場合があります。

子供のうちは注意散漫な場合が多いため、保護者の方もマウスピースの管理について注意を促すことが大切です。

7. 親子に安心の 供のマウスピース矯正はhanaravi(ハナラビ)

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子供のマウスピース矯正について解説しました。

1期治療など、早期から歯並びを改善することは顎の成長促進や発音の改善、指しゃぶりなどの防止に大きく役立ちます。

将来的な歯のリスクを減らすために、子供のうちからの歯科矯正もぜひ検討してみてください。

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