八重歯を矯正する方法は?原因や治療方法を解説!

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。 https://www.med.oita-u.ac.jp/ https://www.oita-u.ac.jp/
 

八重歯は日本では好意的に捉えられており、「愛嬌がある」「親しみやすい」「小悪魔的」などチャームポイントの一つとしてみる人も少なくありません。

しかし、欧米などの外国ではデビルズトゥースやヴァンパイヤトゥースなどと言われ、子どものうちに矯正することがほとんどです。

この記事では、八重歯になる原因や治す方法、放置した場合のデメリットなどについて解説します。

八重歯は叢生の一種

八重歯は叢生(そうせい)という不正咬合の一種です(不正咬合とは、噛み合わせや審美性が悪い歯並びのこと)。

叢生とは、上の歯の中央から3番目にある犬歯(糸切り歯)が、両隣の歯よりも前に出ている状態のことで、日本人の不正咬合の中でも多い歯並びと言われています。

不正咬合の割合

(出典:不正咬合の種類と実態|厚生労働省

八重歯は日本ではチャームポイントとして受容されることが多いですが、海外では改善されるべき歯並びとして認識されることが多いです。最近では、日本でも大人になって八重歯をコンプレックスに感じだし、治療を受ける人が多くなっています。

八重歯になる原因

八重歯になる原因は、主に顎(口)の小ささにあります。

顎の骨が小さいと、歯が並ぶスペースもまた小さくなり、前後にズレる形で歯が並びます。犬歯(糸切り歯)が前に飛び出た場合、八重歯になります。

顎が小さくなる原因としては、以下の3つが挙げられます。

  • 硬いものを食べず、柔らかいものばかり食べていた
  • 離乳が遅かった
  • 長い間おしゃぶりをしていた

柔らかいものばかり食べていると、顎の発達が遅れ、顎の骨が小さくなり、結果として八重歯になってしまいます。

また、離乳が遅かったり、長い期間おしゃぶりをしていたりする場合も、頬の筋肉の緊張によって顎の骨が圧迫され、顎の発達が遅れてしまいます。

なお、虫歯などによって乳歯を早い時期に抜歯すると、他の歯が前に出てきて八重歯になることがあります。

八重歯を治す3つの方法

八重歯を治す方法は主に3つあり、「表側矯正」「裏側矯正」「ワイヤー矯正」が挙げられます。以下の表のとおり、それぞれ治療期間や費用などが異なります

治療方法 概要 治療期間 費用
マウスピース矯正 透明なマウスピース型の矯正装置を
装着する方法
1~2年程度
※部分矯正だともっと短い期間で治
療可能
60~100万円
※部分矯正だと10~40万円
表側矯正(ワイヤー矯正) 歯の表側にブラケットを装着し、ワ
イヤーの力で歯を動かす方法
2年程度
※部分矯正だともっと短い期間で治
療可能
60~130万円
※部分矯正だと30~60万円
裏側矯正(ワイヤー矯正) 歯の裏側にブラケットを装着し、ワ
イヤーの力で歯を動かす方法
※表側矯正よりも見た目が目立たな
い治療方法
3年程度
※部分矯正だともっと短い期間で治
療可能
100~170万円
※部分矯正だと40~70万円

↑表は左右に動かしてご確認いただけます。

ここでは、上記の3つの矯正方法について詳しく解説していきます。

なお、歯並びの症状や、生活スタイルなどによって適切な方法は異なります。そのため矯正方法を検討する際は専門的な知識をもった医師に相談すると良いでしょう。

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マウスピース矯正

1つ目の八重歯を治す方法は「マウスピース矯正」です。マウスピース矯正では、透明なマウスピース型の矯正装置を使って歯列を整えます。

マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも費用が安く、治療期間が短く、痛みや違和感が少ない矯正方法となります。

一方で、大きく歯を動かす必要がある歯並びや、噛み合わせまで治療する歯並びの場合は、ワイヤー矯正の方が適していることが多いです。

費用の相場は60~100万円(※部分矯正の場合は10~40万円)で、矯正期間の目安は1~2年程度(※部分矯正なら数カ月で終わるケースもあり)です。

マウスピース矯正のメリット マウスピース矯正のデメリット
・矯正装置が目立たない
・治療期間が比較的短い
・痛みや違和感が少ない
・矯正装置を自由に取り外せるため、大事なイベントと矯正期間が被っても安心
・治療できる症例が比較的少ない
・装置の装着中は飲食ができない
・矯正装置を自由に取り外せるため、自己管理能力が必要になる

↑表は左右に動かしてご確認いただけます。

実際にhanaraviのマウスピース矯正で治療した歯のガタツキ(叢生)の例としては、以下のものが挙げられます。

ガタツキのある歯の症例

表側矯正(ワイヤー矯正)

2つ目に紹介する方法は「表側矯正(ワイヤー矯正)」です。表側矯正は、歯の表側にブラケットを装着し、ワイヤーの力によって歯を動かす最も一般的な矯正方法です。

表側矯正は歴史が長く、医師の経験・知識が十分に蓄積されており、多くの矯正クリニックで導入されています。歯を大きく動かす治療や、噛み合わせまで整える治療についても対応可能な場合が多いです。

費用の相場は60~130万円(※部分矯正の場合は30~60万円)で、矯正期間の目安は2年程度(部分矯正の場合はもっと短い)です。

ただ、表側矯正は治療期間中に見た目が目立つなどのデメリットがあります。

ワイヤー矯正のメリット ワイヤー矯正のデメリット
・裏側矯正よりも費用が安い
・裏側矯正よりも治療期間が短い
・歯を大きく動かす矯正でも対応可能な場合が多い
・噛み合わせを治す矯正でも対応可能な場合が多い
・見た目が目立つ
・食事中に食べ物がひっかかる
・痛みや違和感が強い

↑表は左右に動かしてご確認いただけます。

裏側矯正(ワイヤー矯正)

3つ目に紹介する方法は「裏側矯正(ワイヤー矯正)」です。裏側矯正は、歯の裏側にブラケット・ワイヤーを装着する方法で、表側矯正よりも目立たない矯正方法となります。

表側矯正同様、歯を大きく動かす治療や、噛み合わせまで改善する治療でも対応可能な場合が多いです。

費用の相場は100~170万円(※部分矯正の場合は40~70万円)で、矯正期間の目安は3年程度(部分矯正であればもっと短い)です。

裏側矯正のメリット 裏側矯正のデメリット
・見た目が目立たない
・歯を大きく動かす矯正でも対応可能な場合が多い
・噛み合わせを治す矯正でも対応可能な場合が多い
・表側矯正よりも費用が高い
・表側矯正よりも治療期間が長い

↑表は左右に動かしてご確認いただけます。

部分矯正とは?

上記の3つの矯正方法は、それぞれ「歯列全体を矯正するか」「前歯だけなど部分的に矯正するか」によって費用や期間などが異なります。

歯列全体を治療する矯正を「全体矯正」といい、部分的な歯列を治療する矯正を「部分矯正」といいます。

それぞれのメリット・デメリットなどは以下のとおりです。

メリット デメリット
全体矯正 ・奥歯全体を含む歯列全体を矯正できる
・方法によっては噛み合わせも治療できる
・抜歯を伴う矯正にも対応できる
・矯正期間が比較的長い
・費用が比較的高い
部分矯正 ・気になる部分だけ(前歯だけ/歯一本だけなど)治療することができる
・矯正期間を短くできる
・費用を抑えられる
・噛み合わせは治療できない
・奥歯は治療できない

↑表は左右に動かしてご確認いただけます。

八重歯の矯正の「抜歯」について

八重歯の矯正を検討している人は「八重歯を抜く必要があるのかな…」という不安を抱える人も少なくありません。

そのためここでは、以下の2点について解説します。

  • 抜歯のメリット・デメリット
  • 抜歯をしないで治療する方法

(1)抜歯のメリット・デメリット

歯科矯正では、歯を動かして歯並びを整えるので、歯を動かす先の空いたスペースが必要になります。

そのスペースがない場合、歯を薄く削ったり、歯を傾けたり、抜歯を行ったりしてから歯を動かす治療をはじめます。

つまり抜歯は「歯のスペースをつくるための手段の一つ」なのです(必ずしも八重歯を抜歯するとは限らず、親知らずなど永久歯を抜歯するケースもあります)。

抜歯のメリットとしては以下の3つが挙げられます

  • 口を閉じたときの口元のシルエットが綺麗になりやすい
  • 治療計画をたてやすい
  • 後戻りしづらい

※「後戻り」とは、矯正完了後に歯が元の位置に戻ってしまうこと

一方、抜歯には以下のとおり3つのデメリットがあります。

  • 健康な歯を抜くため精神的な負担が生じる
  • 抜歯後に腫れや痛みが生じる
  • 歯がなくなることで歯列にぽっかり隙間ができる(一時的に口元の見た目が悪くなる)

(2)抜歯をしないで治療する方法

抜歯以外にも歯を動かすスペースを確保する方法はあります。具体的には以下の4つの方法を挙げることができます。

  • 歯を奥歯側へ動かす
  • 歯列のアーチを外側へ広げる
  • 歯を少し削る
  • 歯を外側へ傾ける

①歯を奥歯側へ動かす

1つ目に紹介する「抜歯以外に歯列のスペースをつくる」方法は、「歯を奥歯側へ動かす」ことです。

歯の奥側にスペースを確保できる人の場合に有効な方法です。親知らずを抜歯してスペースをつくる場合もあります。

ただ、何らかの事情により奥側にスペースをつくれない人もいるので、その場合は行うことができません。

②歯列のアーチを外側へ広げる

2つ目に紹介する方法は「歯列のアーチを外側へ広げる」ことです。歯科矯正では、専用の装置を使って歯列のアーチ全体を外側へ広げることができます。

ただ、歯列が外側に倒れている人など、適用できないケースもあります。もともと歯が内側に倒れていたり、アーチが狭い人に対して有効な手段となります。

③歯を少し削る

3つ目に紹介する方法は「歯を少し削る」ことです。歯科矯正における歯の研磨は「IPR」や「ディスキング」と呼ばれることもあります。

歯1本あたり、片面0.25mm以内(両面で0.5mm以内)というわずかな量の研磨を行うので、健康上は問題ありません。

④歯を外側に傾ける

4つ目に紹介する方法は「歯を外側に傾ける」ことです。

歯が内側に倒れている人に対して有効な方法となります。なお、もともと外側に歯が倒れている人は適用外となります。

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八重歯の矯正シミュレーション画像

八重歯を放置するデメリット

外国と違い、日本では八重歯をそのままにする人も多いですが、放置した場合には以下のデメリットがあります。

  1. 虫歯になりやすい
  2. 噛み合わせが悪く口の中を傷つけやすい

①虫歯になりやすい

八重歯は隣の歯と重なり合って生えています。そのため、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスなどが届きにくい箇所があり、食べかすや歯垢が溜まって虫歯や歯周病になりやすい傾向にあります。

虫歯や歯周病によって歯の健康寿命が短くなるため、長く自分の歯が使えなくなってしまう恐れがあります。

②噛み合わせが悪く口の中を傷つけやすい

本来犬歯は歯の中でも深く噛み合う歯ですが、八重歯になると噛み合わせが悪くなります。

噛み合わせが悪いと食べ物をしっかり噛みきれないまたは咀嚼できないばかりか、一箇所の歯に不自然に圧力がかかったり、あごの関節に負担がかかったりします

また、尖っている歯のため咀嚼するときに口の中を傷つけてしまう場合があります。

八重歯は見た目がそれほど気にならない、または普段噛み合わせで不自由がないからと放置しておかず治療した方がいいでしょう。

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