矯正のディスキング(IPR)とは?効果やリスク、避ける方法を解説

大分大学医学部医学科卒業。医師として救急医療や在宅医療に従事し、マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感。美容という切り口で本質的な予防につなげる入口として、口腔という臓器に興味を持つ。口腔環境が多くの臓器に影響を及ぼし、多くの病気に繋がってしまうというポイントから予防について新聞・テレビ・WEBメディア等で情報を発信している。 https://www.med.oita-u.ac.jp/ https://www.oita-u.ac.jp/
 

歯科矯正では、歯を動かすスペースを確保するため、歯を薄く研磨する「ディスキング(=IPR)」を行うことがあります。

しかし、治療のためとはいえ、健康な歯を研磨するディスキングに対し、抵抗を感じる人もいるでしょう。

そこでこの記事では、ディスキングの目的や効果、リスク、ディスキング以外の矯正方法などについて解説します。

1. ディスキング(IPR)とは

ディスキングとは、歯のエナメル質を薄く(最大0.5mm)削り、歯と歯の間にスペースをつくる治療方法のことです。

IPR(=Inter-proximal Reduction)と呼ばれることもあります。

ディスキングを行う際は、専用のヤスリやディスク(円盤状の切削器具)などを使って歯を削っていきます。

「健康な歯を削る」こと自体に不安を感じる人も多いですが、ディスキングは非常に薄く歯を削るので、健康を阻害することはほとんどありません

歯のサイズの問題を抱えている人や、歯を動かすスペースがない人などにとって、ディスキングは非常に効果的な治療方法になります。

(1)ディスキングと抜歯の違い

歯科矯正では、歯を動かすためのスペースをつくる際に、ディスキングではなく抜歯を行うこともあります。

矯正における抜歯では、文字通り歯を抜くことによってスペースをつくります。

抜歯の対象になることが多い小臼歯を抜いた場合だと、およそ7mmほどのスペースをつくることができます。

矯正では基本的に左右対称のスペースを確保するので、左右1本ずつ抜歯を行うと「7mm×2本=14mm」ほどのスペースをつくることができます。

抜歯は、歯を動かすためのスペースをディスキングよりも広く作ることができますそのため、歯を大きく動かす必要がある歯並びの場合などに向いています。

ディスキングが向いているケースもありますし、抜歯が向いているケースもあり、一概にどちらが良いとはいえません。

自分にどちらが向いているかわからない人は、カウンセリング時などに相談してみましょう。

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2. ディスキングの目的や効果

ディスキング(IPR)の目的や効果については以下の通りです。

  • 歯の大きさのバランスを調整する
  • 歯を並べる隙間を確保する
  • ブラックトライアングルを解消する
  • 後戻りを防止する

(1)歯の大きさのバランスを調整する

ディスキングには、歯の大きさのバランスを調整する目的があります。

歯が大きすぎたり小さすぎたりする場合に、歯を少しずつ削ることによって、歯列全体の見た目を整えることができるわけです。

歯の大きさの問題は、歯並びの見た目の問題に直結しています。

例えば、歯のサイズが左右非対称になっていたり、正中線がズレていたりすると、見た目のバランスがおかしくなってしまいます。

また、歯のサイズの違いによって噛み合わせの問題を引き起こすこともあります。

例えば、歯が大きすぎるため、噛んだときに上の歯と下の葉が強く当たったり、その逆に歯が小さすぎるため、歯と歯の間に隙間が生じてしまうこともあるでしょう。

ディスキングを行うことによって、そうした見た目や機能の問題を解消することができます。

ただ、重度の歯のサイズの問題を抱えている場合など、ディスキングでは対応できない症例もあります。

(2)歯を並べる隙間を確保する

矯正で歯並びを整える際は、歯を動かすための隙間(スペース)を作る必要があります。

その際、後述するとおり、抜歯や側方拡大、臼歯の移動などによってスペースを確保することもありますが、ケースによってはディスキングを行うこともあります。

例えば、前歯が突き出ている出っ歯などのケースでは、ディスキングによってスペースを確保し、前歯を舌側へ引っ込めるといった治療を行うことがあります。

(3)ブラックトライアングルを解消する

ディスキングは、ブラックトライアングルを解消するために行われることもあります。

ブラックトライアングルとは、歯と歯茎の間にできる三角形の空洞のことです。

ブラックトライアングルは、主に以下のような原因によって生じます。

  • 加齢にともない、歯と歯の間の歯肉が下がってブラックトラアングルができるケース
  • 歯肉炎や歯周病が進行し、歯槽膿漏になり、ブラックトライアングルが形成されるケース
  • 適切ではない歯ブラシの仕方によってブラックトライアングルが形成されるケース

ブラックトライアングルができると、以下のようなデメリット・弊害が生じます。

  • 「見た目が悪い」などの審美的な問題が生じる
  • 食べ物が歯と歯の隙間に挟まりやすくなる
  • 隙間のブラッシングが難しいため、虫歯・歯周病のリスクが高まる
  • 歯と歯の隙間から空気が漏れるため発音が悪くなる

こうしたブラックトライアングルの治療するため、ディスキングを行うことがあります(被せ物や詰め物をしてすき間を解消するなど他の治療法もあります)。

この場合のディスキングでは、歯の大きさのバランスを整えたり、歯の角を削って歯の根元の隙間を小さくすることで、ブラックトライアングルを解消します

症状によっては、ディスキングよりも先に歯周病の治療などが優先されることもあります(歯周病が進行していると、ディスキングなどで治療をしてもブラックトライアングルの進行自体を止められないため)。

状況にもよりますが、経験を積んだ医師が必要だと判断する場合には、ディスキングによってブラックトライアングルの治療を行うことができるでしょう。

(4)後戻りを防止する

ディスキングには「後戻り」を防止する効果もあります。

後戻りとは、歯科矯正で歯を動かした後、歯が元の位置に戻ることをいいます。

後戻りが生じてしまうと、せっかく行った矯正が無駄になってしまいます。

そのため、歯科矯正では主に「リテーナー」と呼ばれる器具を使い、後戻りしないように歯を保定します。

ディスキングを効果的に行うと、歯と歯のすき間を埋め、歯同士が互いを支え合うように調整することができます。

歯と歯は接触し合うことで互いの位置を安定させているので、歯の接触面を調整するディスキングは、後戻りを防ぐ効果を持つのです。

3. ディスキングのリスクと誤解

ディスキングは歯を切除する治療なので、「削った部分が知覚過敏になる」「虫歯になりやすくなる」といったリスクがあると指摘されることもあります。

しかし実際のところ、ディスキングによって知覚過敏が生じることはほとんどありません。

知覚過敏は主に歯の象牙質の露出によって生じますが、ディスキングでは、象牙質の外側のエナメル質しか切除しないためです。

もし仮に知覚過敏が生じたとしても、クリニックで知覚過敏用の薬を処方してもらえば症状を抑えることができるでしょう。

また、ディスキングによって虫歯のリスクが高まることもありません。

むしろディスキングは歯の再石灰化(歯のエナメル質の表面を修復すること)を促し、虫歯に対する抵抗力を高めるという報告もあります。

もしディスキングについて気になることがある人は、担当する歯科医師と丁寧なコミュニケーションをとり、その必要性やリスクについて確認してください。

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4. ディスキングをした人の口コミ

Twitterなどで調べたところ、以下のとおり、ディスキングを行った人の口コミが見つかりました。

ディスキングを行う前に「不安を感じている」などとつぶやいている人もしばしばいましたが、治療が終わった後は「痛みなど少なかった」「無事に終わった」という人が多数派でした。

5. ディスキング以外の治療方法

次に、ディスキング以外の方法によって歯のスペースをつくる治療法を2つご紹介します。

(1)側方拡大

側方拡大とは、装置や急速拡大装置といった「拡大装置」を使い、歯の位置を頬側へ移動させ、歯を並べるスペースを確保する方法のことです。

この方法では、歯を削ったり抜歯しなくても、歯を動かすためのスペースをつくることができます。

ただ、必ずしも側方拡大を選ぶことができるとは限りません。

拡大によって十分にスペースを確保できない歯列や、前歯の角度や噛み合わせの問題から抜歯をしたほうがいい歯列もあります。

(2)臼歯の後方移動

臼歯の後方移動とは、矯正装置を用いて歯を奥側に引っ張ることです。側方拡大と同様、臼歯の後方移動でも、歯を動かすためのスペースをつくることができます。

ケースによっては、親知らずを抜歯して臼歯の後方移動をすることもあります。

親知らずの抜歯は、他の健康な歯を抜歯する場合に比べると、精神的なダメージが少ない治療方法となります。

側方拡大や臼歯の後方移動に興味がある人は、矯正歯科で医師に相談するとよいでしょう。

症例によっては抜歯やディスキングを行ったほうが良い場合もあるので、専門的な知識を持つ医師に判断してもらう必要があります。

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6. ディスキングに関するよくある質問

最後に、ディスキングに関するよくある質問を2つ回答します。

(1)ディスキングは痛いですか?

ディスキングは、ほとんど痛みを感じない治療方法です。

虫歯の治療における大きな歯の切除と違い、ディスキングは歯のエナメル質の表面をわずかに研磨するためです。

削っている間も、削った後も痛みを感じることはほとんどありません。

まれに歯がしみる感覚を感じる人がいますが、そうした知覚過敏の症状を感じた際は、医師に相談すれば薬などを処方してくれるでしょう。

(2)ディスキングは何ミリまで行われますか?

ディスキングで切除するのは、1カ所0.25mmで、1つの歯あたり0.5mmまでです。

この範囲のディスキングであれば、虫歯などを引き起こすリスク(カリエスリスク)が高くなることはありません。

7. ディスキングが必要な治療もhanaravi(ハナラビ)

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